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本日の日本経済新聞に、大塚家具社との業務・資本提携についての記事が掲載されました。
2017-11-16
大塚家具の「救世主」? TKPの皮算用
業績低迷に悩む大塚家具に出資すると6日発表し、にわかに注目を浴びる貸会議室大手のティーケーピー(TKP)。今年3月に東証マザーズに上場したばかりの新興企業だ。家具店の余剰スペースを貸会議室に転用するといったコスト削減策に共同で取り組む。今回の提携は一見、TKPが大塚家具に救いの手を差し伸べたかのように映る。だが見方を変えると、むしろTKPにとって「うまみのある投資案件」との側面も浮かび上がる。
「私は大塚家具のファンで、社長室の家具は全て同社で購入したものだ。同社に再興してもらいたいという思いがあった」。6日の共同記者会見で、TKPの河野貴輝社長はこう意気込んだ。今回の提携の話は夏ごろにTKP側から持ちかけたという。TKPは資本業務提携で10億円を投じ、大塚家具株の6.65%を取得する。
大塚家具は提携のどこに魅力を感じたのだろうか。大塚家具は現預金の減少が不安視されるものの、9月末時点で金融機関からの借り入れはゼロで、財務の健全性を示す自己資本比率も60%とまだ高めだ。金融機関との融資枠(コミットメントライン)契約も結んでおり、10億円という出資額は資金調達面での利点はあまり大きくない。
それでもTKPと組んだのは、店舗面積が縮小できるためとみられる。大塚家具は賃料削減のため床面積1万平方メートルの店舗を減らし、3千~7千平方メートルの店を増やそうとしている。長期の賃貸契約は簡単には短縮できないが、余剰スペースをTKPに転貸すれば負担を抑えられる。会見では仙台駅前のビルの3~8階に入居する「仙台ショールーム」のうち、7~8階を貸会議室に転用する方針も明らかにした。
TKP側のメリットも大きい。同社は全国1,800カ所超の貸会議室を運営している。物件を原則保有せず、オーナーから借りた部屋を会議室に改装して転貸するビジネスモデルだ。
全国の主要都市ではオフィス需要が拡大しており、ビルの空室率は歴史的な低水準だ。TKPも物件を仕入れにくくなっており、河野社長は「大塚家具に空きスペースがあるなら独占したかった」と豪語する。10億円の出資額は、好立地への出店費用と位置付けることもできる。
河野社長は慶応大学を卒業後、伊藤忠商事に入社。為替や債券のディーラーを経験し、日本オンライン証券(現・カブドットコム証券)の設立にも携わった。その後、起業して2005年にTKPを設立。もともと競合相手が少ない市場で、短期間で最大手にのし上がった。40歳代半ばとまだ若く、エネルギッシュさが持ち味だ。
18年2月期の上高は前期比22%増の268億円、営業利益は21%増の32億円を見込む。13年には都内の老舗食品会社、常盤軒の仕出し弁当事業を買収した。貸会議室にケータリングサービスを提供して、客単価の引き上げに取り組むなど、本業と相乗効果のある周辺ビジネスの拡大にも取り組んでいる。
河野社長は15日、日本経済新聞に対し「大塚家具株はキャピタルゲインを狙った売却はしない。必要であれば買い増す用意もある」と友好関係を強調した。TKPが持つシティホテルや旅館に大塚家具の商品を仕入れたり、TKPの法人顧客に家具を販売するといった連携も考えているという。
家具店に貸会議室を設けるという、ベンチャーらしいユニークな発想で勝負に出たTKP。もっとも業績への寄与が限定的であれば、提携の効果は「皮算用」になりかねない。知名度を一気に上げたTKPにとっても、大きな賭けとなりそうだ。
(証券部 和田大蔵)