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ティーケーピー社長河野貴輝氏――貸会議室、解体前ビル見て発想(起業の軌跡)
2013-03-18
日本経済新聞「起業の軌跡」に当社代表が掲載されました。
ネットで発信、料金安く
2月中旬。貸会議室最大手のティーケーピー(TKP、東京・新宿)はJR市ケ谷駅前にあるシャープの元東京支社ビルを衣替えした貸会議室施設の開業式典を開いた。収容人数は約5400人(着席数)と1棟では国内最大規模だ。
元首相の森喜朗や伊藤忠商事会長の小林栄三らが出席するなか、創業社長の河野貴輝は「今年は売上高が100億円を超える節目の年になる。第2ステージに進んでいきたい」と誇らしげに宣言した。
2005年設立のTKPは現在、全国で1100の貸会議室や貸しホールを運営し、合計収容人数は約7万6千人(同)、毎月の利用者は60万人にのぼる。海外でも中国・上海で2施設運営するほか、米ニューヨークで来月、シンガポールでも6月に開業する。
大学時代、将来の起業資金をためようとアルバイトで得たお金で株式投資を始めた。すぐにのめり込み、ディーラーかファンドマネジャーになろうと考え、目的別採用をしていた伊藤忠商事に入社。為替証券部で為替ディーラーになった。
数年後、伊藤忠が取り組んでいたオンライン証券の設立に参画。会社に泊まり込んでシステム開発を手がける上司の姿を見て、忘れかけていた起業家精神が頭をもたげてきた。その後、インターネット銀行のイーバンク銀行(現楽天銀行)を設立するため、上司とともに伊藤忠を退社する。
同行で取締役営業本部長として腕を振るうが、ネット企業からの買収攻勢に翻弄されるうち違和感を持ち、起業しようと退社。事業の種を探している時に、再開発で取り壊すことが決まっていたビルの活用方法を知人から相談された。
思いついたのが会議室として貸すことだった。まず相場の3分の1で借り、ネットで賃貸情報を発信して1人につき1時間100円換算で料金を設定した。貸会議室情報をネットで発信するのはまだ珍しかった時代。イーバンク銀行などで「(足を使った)営業をしなくても、割安感があれば即座に顧客が集まるネットの威力を知っていた」からこその発想だった。
予約の電話はひっきりなしに鳴り響いた。安く借り、ネットで情報発信し、数時間単位で手ごろな価格で貸すというビジネスモデルが固まった。
会合向けの仕出し提供のために老舗の弁当会社を買収するなど、利用者の使い勝手向上を追求する。「世の中に貢献できる本物の会社をつくりたい」。曲折を経て天職に巡り合った河野に迷いはない。=敬称略
(漆間泰志)
かわの・たかてる 1996年(平8年)慶大商卒、伊藤忠商事入社。ネット銀行などを経て2005年ティーケーピー設立。大分県出身。40歳