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東京よりも大きな市場を求めてニューヨークを選択-会議室サービスTKPの米国ビジネス戦略-(ニューヨーク事務所)
2013-03-25
通商弘報に当社記事が掲載されました。
再開発が決まったビルのフロアを利用した会議室サービスという新たなビジネスモデルで急成長を遂げたティーケーピー(TKP)は、米国市場に進出するため2010年に現地法人を立ち上げた。ニューヨークでのサービス提供開始を間近に控えた同社執行役員企画部長の横岩利恵氏とTKPニューヨーク社長の菊池澄香氏に、2013年1月22日に話を聞いた。
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<ニューヨークには貸会議室の需要が高いと判断>
問:米国進出のきっかけは。
答:米国に現地法人を設立したのは2010年。本社であるTKPを日本で設立したのは2005年のこと。設立以来、貸会議室ビジネスは非常に順調で、5期目となる2009年には年商33億円を突破したので、日本を飛び出してビジネスを展開することを考えた。
日本で当社を立ち上げたころは、東京には再開発に向けて取り壊し予定となっている古いビルが非常に多かった。ビルの取り壊しまでにはたいてい2年ほど猶予があるものの、既に当該ビルに入居しているテナントは、ビルの取り壊しが決まった時点で退去し始めるため、まだ利用できるビル内に空き室ができていた。こういった取り壊しが決定したビルの空き室を、期限付きでビルオーナーから借り、内部を改装して会議室として顧客に貸し出すというビジネスを始めた。取り壊しが決まっているので安く借りることができる上、ビルオーナー側も取り壊し直前まで家賃収入を得ることができる。さらに、ホテルの会議室ほど賃料が高くない貸会議室に対するニーズも高かったため、関係者全員に資するビジネスモデルが構築できた。
日本での基盤が固まったところで、ビジネスを世界に広げていくことを決断した。市場シェアを拡大していくための候補地としては、東京よりも大きな経済都市にチャンスがあると考えた。ニューヨーク市を米国での進出先として選定したのは、東京より大きな経済圏で、不動産市況が成熟しており、企業の数も多く、貸会議室の需要も高いと判断したからだ。
<貸会議室の内装工事に遅れ>
問:進出決定後の準備は
答:米国法人のTKPニューヨークを設立後、貸会議室として提供するための物件探しを始めた。日本でも米国でも、当社は自社ビルを所有しておらず、全て賃貸でオーナーからビル内の空き部屋を借りている。ニューヨーク市内で借りている物件は、タイムズスクエアに近い場所にあるビルの2階、1階、地下1階の3フロアで、床面積は全部で約1,000平方メートルある。貸会議室として営業するための内装工事を行い、2012年内に「TKPニューヨークカンファレンスセンター(New York Conference Center)」として貸会議室事業を開始する予定だったが、現在もまだ内装工事中で、オープンに至っていない。
しかし、ウェブサイトでの宣伝やニューヨーク市内にある日系企業などへの営業活動は2011年から開始しており、既に予約は入っている。近日中にはオープンできる予定だ。なお、同センターは、会議室が12部屋あり、数人用の小規模の会議室から、収容人数300人の大規模なイベントホールまで、さまざまな大きさの部屋を取りそろえている。
<強みはきめ細かなサービスメニュー>
問:貴社の強みは 。
答:TKPニューヨークカンファレンスセンターは、大規模な会議などでよく利用されるホテルの宴会場とほぼ同じような設備を備えた内装となっているため、見た目はホテル設備に劣らない。当社が他社と差別化を図っているのは、貸会議室のサービスメニューを細かく分けていることだ。例えば、ホテルの宴会場などは大概の場合、利用者が必要としないサービスも含んだ高めの価格設定となっている。一方、当社の場合、利用者が必要とするサービスだけを選んで、安く会議室を利用することができる。スペースだけを必要とする利用者もいれば、飲食などのフルサービスを必要とする利用者もいるため、顧客の予算や目的に合わせて、必要とするサービスを的確に提供できるようにしている点が、他社との違いだ。また、リーズナブルな価格で貸会議室を提供することで、自社オフィスの延長として利用していただきたいと考えている。このような日本のホスピタリティーに基づくサービスは、ニューヨークで高く評価されるのではないかと考えている。
<日米の法・商慣習の違いを痛感>
問:米国ビジネスを立ち上げる上で苦労した点は。
答:ニューヨークカンファレンスセンターのオープンが遅れているのは、米国に来てみなければ分からなかった問題が多発したからだ。
日本ではビジネスを開始するに当たり、言葉をはじめ習慣や文化などが特に障害になることはない。また法律も決して簡単ではないが、ある程度は理解できる。しかし、米国ではそれが非常に難しいということを思い知らされた。米国の法律を読んだとしても、解釈など、文字どおりではないことが多い。特に慣習的なものは、現地に来てみなければ一切分からなかった。内装工事を委託するベンダーとの契約でも、多くの制約があったり、また政府からさまざまな許認可を取得する必要があったり、とにかくビジネスの習慣が日本とは全く異なるため、思うように進まなかった。また、工事途中でビルオーナーが変更になるなど、想定外の問題が多数発生した。しかし、それらも何とか乗り越え、間もなくオープンできるところまで来ている。
<将来は欧州でもビジネス展開したい>
問:広告や宣伝方法は。
答:当社の米国サイトでPRを行っているほか、検索サイトでの広告出稿などにより、利用に関する問い合わせを毎日いただいている。将来的に会議室を借りたいお客様からの予約は入っている一方で、まだオープンしていないということで、お断りをしたお客様も多く、非常に申し訳ないと思っている。
オープン後は、3年以内にさらに2~3ヵ所、マンハッタン内に同様の施設をオープンする計画だ。その後、ニューヨークでの事業が軌道に乗り次第、全米に貸会議室ビジネスを広げていきたいと考えている。当社は既に2011年に中国の上海に進出しており、2012年には香港でも事業を開始した。シンガポールでも同様のビジネスを開始する準備を進めている。こうして、アジアと米国で基盤を固めた後、将来的には欧州にも貸会議室ビジネスを展開していきたいという野望がある。日本発のビジネスモデルを世界で事業展開していきたいと考えている。
(秋山士郎)
(米国)